殺人狂想曲

<L'homme a L'impermeable>  (56年仏)

<スタッフ>
製作
 監督
脚本・台詞

撮影
美術
音楽

<キャスト>
アルペール
ラファエル
フロランス

ジェイムス・ハドレイ・チェイス
ジュリアン・デュヴィヴィエ
ジュリアン・デュヴィヴィエ
ルネ・パルジャヴェル
ロジェ・ユペール
ロベール・クラヴェル
ジョルジュ・ヴァン・パリス


フエルナンデル
ペルナール・ブリエ
クロード・シルヴザン
 デュヴィヴィエといえばペシミスム映画の元祖のように思われているが、そのデュヴィヴィエが 時おりみせるユーモラスなコメディの最新作。
 イギリス探偵小説界の中堅作家で戦後のフランス映画界で数多くその作品が映画化されている ジェイムス・ハドレイ・チェイスの小説を、「陽気なドン・カミロ」のルネ・ハルジャヴェルと 監督のデュヴィヴィエが、共同で脚色、台詞を担当したこの作品は、デュヴィヴィエの作品系列にあっては、 どちらかといえば「陽気たドン・カミロ」「アンリエットの巴里祭」「ドン・カミロ頑張る」の系列に属するもので、 いわばスリラー・コメディともいうべきもの。
 撮影は.「過去を持つ愛情」のロジエ・ユベールが、美術は「乙女の館」のロペール・クラヴェルが、 音楽は「乙女の館」のジョルジュ・ヴァン・パリスらの一流どころがそれぞれこの作品の製作面に協力している。
 「陽気なドン・カミロ」など "ドン・カミロ" シリーズですでにおなじみのフランス映画界きっての名コメデ ィアン、フエルナソデルを中心に「罪と罰」のベルナール・ブリエ、それに「男の争い」のクロオド・シ、ルヴァ ンをはじめ、ジュデイツト・マーグル、アルマンド・ナヴァル、エディット・ジョルジュらの新人女優の競演に 加えて「幻想交響楽」のジュリアン・ベルトオ、堅実な演技に定評のあるジャン・リゴオ、近年めきめき売り出 して来た新進ジャック・デュビイらが助演している。
 <物語>  アルベール・コンスタンタンはシャトレ劇場のオーケストラ・ボックスで舞台に背を向けたまま 10年1日の如くにクラリネットを吹き続けて来た実直た男である。 <BR> 或る火曜日のこと、その彼が珍らしく練習の時間に遅れた。 叔父危篤の電報を受けで田舎に発つ妻のマルグリットを駅まで見送ったためである。 コンスタンタン夫妻が離れて暮すのは15年の結婚生活で初めてのことだった。小心で九帳面な アルベールはまたそれほど忠実た夫でもあったのだ。
 練習を終ってそそくさと帰ろうとするアルベールは意味ありげた笑いを浮べた同僚のオーボエ奏者ブロンドオに引きと められた。彼はこの忠実な夫に、妻の留守の間によろしく楽しむべきだと説いた上、自身何度か通ったらしい劇場のコー ラス娘の1人エバの電話番号を控えた紙きれをアルベールのポケットに押しこんだのである。その場はかぶりを掠って逃 げ出したアルベールも、ひと気のないわが家に帰って見ると、やもめ暮しのわびしさもまたひとしお、幾度かためらっ た挙句、手にした紙切れの番号通り電話のダイヤルを廻してしまったのも無理のないことだった。
 「どうぞいらして、お待ちしてるわ」若い女の声は悩ましく彼の心を刺戟した。
 サン・.バンサン街35にあるエバのアパートをレインコート姿のアルベールが訪ねたのはその深夜のことだった。 胸をときめかせながら・・・   (112分)

inserted by FC2 system