居酒屋

<Gervaise>    (56年仏)

<スタッフ>
原作
 脚色・台詞

監督
 撮影
音楽


<キャスト>
ジェルヴェーズ
  クポー
  ヴォシュ夫人
  ランチェ
  グジェ
 

エミール・ゾラ
ジャン・オーランシュ
ピエール・ボスト
ルネ・クレマン
ロベール・ジュイヤール
ジョルジュ・オーリック



マリア・シェル
フランソワ・ペリエ
マチルド・カサドジュ
アルマン・メストラル
ジャック・アルダン
 「禁じられた遊び」の名匠ルネ・クレマソ監督が、53年の「しのび逢い」以来3年振りに発表した最新作。
 19世紀フラソス自然主義文学の巨匠エミール・ゾラが、尨大な構想のもとに筆をとった 「ルーゴソ・マッカール叢書」のうちの一つとして1877年に発表した「居酒屋」を、 文芸作品の脚色においてはフラソス映画界にあってもその右に出るものがないといわれ、 すでに「鉄格子の彼方」や「禁じられた遊び」でクレマソ監督と協力していろ名コンビ、ジャン・オーランシュと ピエール・ポストが脚色し、更に台詞を書き加えた。
 この映画の時代的背景となっている1852年から1860年頃のフラソスは、 ちょうどナボレオソ三世治下の第二帝政時代に当り、当時のパリの労働者たちは、 混乱した経済状勢の影響をうけて、非常に貧しい生活に追いこまれ、 人生の惨めさを忘れようとして泥酔と怠堕の生活におちこんで行った。 こういった労働者たちの中で生きたジェルヴェーズの哀れた生注をゾラは彼独特の筆致で克明に描きだしたが、 このいつの世にも変らない女性の悲劇を、クレマン監督は、映画のリアリズムを駆使して 現代の私たちにも強く訴えるようにスクリーン上に見事に描破している。
 戦後ドイツ映画界きっての名女優の一人といわれ、「かくてわが恋は終りぬ」「ナポレオン」と 英仏独映画界に活躍する国際スタアで、本年度ヴェニス映画祭の最優秀女優演技賞に輝くマリア・シェル、 「ハラ色の人生」「オルフェ」のフランソワ・ペリエの二人の主演者をはじめ、 「犯罪河岸」のシュジイ・ドレエル、マチルド・カサドジュ、有名たシャソソソ歌手のアルマソ・メストラル、 ジャニイ・オルト、ジャック・アルダンといった具合に、助演者の1人にいたるまで、 華やかなスタアではなく、渋い演技力を待った地味ね顔振れを揃えたところに、 19世紀後半のパリの庶民生活の雰囲気を盛り上げようとするクレマソ監督の並々ねらぬ野心の程がうかがえる。
 更にスタッフの方も、「禁じられた遊び」「夜の騎士道」の名手ロペエル・ジュイヤールが撮影を、 「海の牙」「禁じられた遊び」のポオル・ベルトランが美術を、フラソス映画音楽の第一人者で、 「男の争い」のジョルジュ・オーリックが音楽と、この作品にふさわしい一流どころが協力している。
 <物語>  朝になった。ジェルヴェーズは窓際に腰をおろして待っている。昨夜からランチエは帰らないのだ。 こんなことは初めてだった。界隈で一番の好男子だと常に自慢にしていたランチエが帰らないのだ。 しかも事もあろうに通一つへだてた向いの家で浮気女と一夜を過したというのだ。
 今から百年ほど前パリの下町での話である。しかしジェルヴェーズはパリ女ではない。 勝気でまじめで働くことをいとわぬ若い田舎女だった。14でランチエと一緒になったが、 2人の子供までなしながら、ランチエは彼女を正式な妻として入籍しようとはしなかった。
 2人はなにがしかの貯えを持って一旗あげようと2ケ月前にパリへ出て来たのだが、 怠け者で漁色家でうぬぼれの強いランチエはその貯金もとうにつかい果していた。 しかし上衣のボタン穴に花をさして帰って来た彼に対して、いつまで文句をならべてもいられなかった。 働かねば食べられねいのだ。
 急いで出かけた共同洗濯場にやがて2人の子供がやって来て、 父親のランチエが向いの女と出て行った事を聞いた彼女は目の前が暗くなった思いだったが、 たまたまそこにやって来たその女の姉ゲィルジニイを見つける と負けぬ気の彼女はヴィルジニイととっ組み合いの喧嘩を始め、とうとう相手を組み伏せて、 洗濯棒で、その尻を思いきり殴りつけて溜飲を下げるのだった。
 ランチエに裏切られても、勝気なジェルヴェーズは挫けず働いた。その甲斐あってか、 貧しくはあったが真面目た屋根職人クポーと結婚することができた。彼女は初めて正式な妻としてむかえられたのである。
 世帯を持った夫婦には7スウの金しかなかったが、彼女の身のうちには 泉のように勇気が溢れ出て来るのだった。2人は身を粉にして働き、とうとう6百フランもの金を貯める事ができた。 2人の間にはナナも生れた。彼らは希望に燃えて年来の夢の実現にとりかかった。 一軒の店を借り受けて洗濯屋を開こう云うのだ。
 しかし、好事魔多し、思いがけぬ災難に2人の幸福と希望は 一瞬にして崩れてしまった。クポーがあやまって屋根から落ちて大怪我をしたのである。
 クポーは生命をとりとめたが、この怪我人の世話をし、彼の分だけ余計働かねばならぬ彼女は ・・・(102分)
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