いとこ同志

<Les Cousins>   (59年仏)

<スタッフ>
製作・監督・脚本
撮影
美術

音楽

<キャスト>
シャルル
ポール
フロランス
クロヴィス

クロード・シャブロル
アンリ・ドカエ
ジャック・ソールニエ
ベルナール・エヴァン
ポール・ミスラキ


ジェラール・ブラン
ジャン・クロード・ブリアリ
ジュリエット・メニエル
クロード・セルヴァル
 最近、フラソス′映画界にすぐれた新人監督が続々と輩出しているが、この映画の監督クロード・シャブロルも その一人。いわゆるヌヴェル・ヴァーグ" (新しい汲)と呼ばれる一群の新人監督の中でもトップを行く 優秀な才能の持主といわれている。今年29才の若さながら、58年に完成した処女作「すばらしきセルジュ」(未輸入)で ジャン・ヴィゴー賞(前衛的な秀作に与えられる賞。「白い馬」が受賞している)を授けられた。
 この「いとこ同志」は「すばらしきセルジュ」に続く第二作で、前作同様、シャブロルが、脚本、演出のみならず、 製作面までを担当、ほとんど自費でつくり上げたもの。田舎から受験のためパリに出て来た純情な青年と、 そのいとこに当る都会育ちの青年を主人公に、受験、恋愛などをめぐって、傷つきやすい青年期の心理を若々しいセンスで鋭く描き出している。
 技術陣は「すばらしきセルジュ」でもシャブロルに協力した「死刑台のエレベーター」「恋人たち」の 名カメラマン、アンリ・ドカエをはじめ、美術はジャック・ソールニエ、ベルナール・エヴァンの両新進、 音楽は映画音楽家として余りにも有名なポール・ミスラキなどの一流ぞろい。
 主演者は「殺意の瞬間」「罪と罰」の苦手男優ジェラール・ブラン、57年にデビューして その特異なパーソナリティを認められた新人ジャン・クロード・ブリアリ、それにコマーシャル映画に出ていたところを シャブロルに偶然発見され、この作品ではじめて映画女優としてデビューしたジュリエット・メニエルの3人。 男優2人は前作でも主役を演じたシャブロルのよき協力者である。
 助演陣では性格俳優クロード・セルヴルが迫力ある演技を見せている他、やはりシャブロルに発見された新人 ジュヌヴィエーヴ・クリュニー、「すばらしきセルジュ」にも出ていたミシェール・メリッツなど溌剌とした 新人群が好演して、パリの学生生活の雰囲気をかもし出している。
 なお、この作品は今春3月パリでの封切で若い世代に非常な好評を博し、更に、6月に開かれた ベルリソ映画祭では、わが「隠し砦の三悪人」をしのいで、グランプリを授けられるという名誉に輝いている。
 <梗概>  いつものようにパリの街にネオンが輝やきはじめた或る暮れ方シャルルはいささかぎこちない足どりで 汽車から降り立った。13才の彼はパリの大学で法学士の試験を受けるために田舎からやって来たのである。 彼の落着き先はヌウイにあるいとこポールの豪華なアパートだった。
 シャルルとポールは父親が兄弟という、年も同じのいとこ同志である。 ポールは自分のアパートに着いたシャルルの肩を抱いて歓迎した。実はシャルルのパリ行きを計画したのも、 たった一人の息子を手ばなしたがらぬ母親をときふせたのもこのポールだったのだ。
 だが、母一人子一人の田舎ぐらしと、何不自由ない裕福な都会の生活という環境の相違は 2人の青年の性格をまるで別のものに仕立て上げていた。着いてすぐ、旅のもようを母親に書き送る純真なシャルル。 その間にも泣き込んで来た昔の女をなだめすかし、たまたま来ていたとりまきの一人、クロヴィスに金を渡して 始末をたのむポール……。
 そんな違いは何事につけて2人の共同生活につきまとった。受験勉強と学校、そして古本屋……。 シャルルはこうした平凡な受験生の生活をくりかえすだけだった。それにひきかえ、金には不自由しないポールは 同じ受験生ながら、自分のアパートに勉強よりは酒と恋愛遊戯に熱心な仲間たちを集めては乱痴気さわぎをくりひろげていた。 彼にとっては女もクロヴィスに金を握らせるだけで、どうにもなる愛玩物でしかなかった。
 そんなポールの生活をよそに、ひとり黙々と勉強を続けていたシャルルにも、或る日恋が芽生えた。 ポールに連れて行かれた学生たちのクラブで、はじめて会ったフロランスの美しい瞳に魅せられてしまったのである。
 かりそめに結ばれてはたちまち消えるうたかたのような男女の仲ばかり。そんな中にも シャルルの心の中にはフロランスの面影が消えようとはしなかった。 フロランスとても、何度か男との経験をもつ平凡な女学生かもしれない。 だが、そんな事はシャルルにとってどうでもよく、フロランスの真実を夢みていたのだ。 ・・・(110分)

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