抵抗(レジスタンス)

   死刑囚の手記より

<Un Condamne a mort s'est echappe
ou "Le vent souffle ou il veut">  (56年仏)

<スタッフ>
監督
原作
 脚色・台詞
撮影
録音

<キャスト>
フォンテーヌ中尉
ジョスト
ブランシエ
レイリスの牧師
オルシニ
エブラール
テ  リ
捕虜110号

ロベール・プレッソン
アンドレ・ドヴィニの手記より
ロベール・プレッソン
レオンス・アンリ・ビュレル
ピエール・アンドレ・ベルトラン


フランソワ・ルテリエ
シャルル・ルクランシェエ
モーリス・ピーアブロック
ローラン・モノ
ジャック・エルトオ
ジャン・ポール・デリュモオ
ロジエ・トレエルヌ
ジャン・フィリップ・ドラマール
 この映画の筋はたつた一言で足りる――1943年、リヨンのモントリュック監獄から一人の死刊 囚が脱獄した――たゞそれだけの話である。
 だが、それだけの中に、生と死の窮局に追いやられた一人の人間がいかに純粋に生き、一つの目的 に集中した人間の精神力がいかに測り知ることの出来ない深さを持っものであるかを、この映画は語 りつくしている。
 物語はアンドレ・ドヴイニという実在のフランス軍人の手記によるものである。当時、ドイツの 占領下にあったリヨンで、ドヴイニ大佐は、ドイツのゲシュタポに捕えられ、死刊の宣告を受け、モ ントリュック監獄の独房に入れられてからの4月間、いつ処刑きれるかも知れない不安な日々のな かで、着々と脱獄の準備をすゝめ遂にその目的を貫き通す空前絶後の体験を書き綴つたものである。
 監督のロペール・プレッソンはドヴイニ大佐のこの手記を映画化するに当り、真実そのまゝを再現す るために、モントリュック監獄にカメラを据え、終始ドヴイニ大佐の細かい指示を受けながら、映画 史上空前と云われるこの大傑作を完成したのである。
 ロベール・プレッソンは我国にはまだ1本もその作品は紹介きれていないが、フランスでは10人の 大監督中でも、最もきびしい芸術的良心の監督として、絶対的な尊敬と信頼とを集めている。鬼才、 という言葉があるが、プレッソンほどこの形容が適切に感じられる人はないであろう。我われはいま 初めて「抵抗」によってプレッソンの作品に接するわけであるが、魂をえぐり出して見せるような、 あまりにもひたむきな、あまりにも烈しい真実の追求の前に、一種名状しがたいおののきを感じなが ら、何時の間にか画面のうちに引き入れられ、画面の中の主人公と共に独房の中で呼吸し、 共に死の不安におののき、共に脱獄の一念につきまとわれているような錯覚に陥るのである。
 <物語>  1943年、独軍占領下のリヨンである。
 ゲシュタポの自動車が3人のフランス人捕虜をモントリュック監獄へ運んで行く。 3人のうちのフォンテーヌ中尉は、疾走する車から飛び下りて逃げるが、直ちに捕えられ、 意識を失ったまま監獄の独房に投げ込まれる。
 突然、フォンテーヌの上にのしかかってきた運命の重圧はあまりにも重かった。 彼にはもう何の希望も許されなかつた。しかし、疲は勇気を取り戻した。
 勇気というより、意志力である。フォンテーヌは一歩々々危険を克服して行く。4ヵ月の間、小 きな独房の孤独の中で、ただ2本の手だけを頼りに、何の役にも立たないようなものから、着々と脱 獄に必要なものを生み出して行く。果して脱獄出来るかどうか、彼にほ何の確信もなかつた。
 始めは、1本のさじを辛棒強く床でナイフのようにとぎ、扉のハメ板を外すことに成功した。さじ が唯一の道具である。
 朝の洗面のとき、又は、列を作って中庭を進むとき、監視の目を盗んで途切れ途切れの言葉を他の 収容者たちささやき交すことが出来たが、誰も彼の言葉を真に受けようとしなかつた。しかし、勇 気は人を引きずるものである。次第にフォンテーヌの意志は他の収容者たちをも動かして行く。
 遂に、準備万端整う日が来た。フォンテーヌは急に体中の力が抜け、意志の力がくじけるのを感じ る。一刻の猶予もなく決行しなければならない。しかし、彼は起ち上れなかつた。
 その間に、事態はますます悪化して行った。ゲシュタポの本部に呼び出された彼は、銃殺の宣告を 受けたのである。再び自動車へ乗せられたとき、烈しい不安におそわれた。監獄へ帰るのだろうか? もう一度あの独房へ入れて貰えるだろうか?・・・
   (97分)

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