恋人たち<Les Amants> (58年仏) |
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<スタッフ> 監督・脚色 原作 台詞 撮影 美術 音楽 編集 <キャスト> ジャンヌ・トールニエ アンリ・トールニエ ラウール ペルナール |
ルイ・マル イバン・ドノン(「明日はない」より) ルイズ・ド・ビルモラン アンリ・ドカー ベルナール・エベン ジャック・ソールニエ ブラームズ レオニード・アザール ジャンヌ・モロー アラン・キュニー ジョゼ・ルイ・ド・ビラロンガ ジャン・マルク・ボリー |
ノエル・カレフ7の小説「死刑台のエレベーター」を、25才という若さから来る独特の近代感覚で映画化し、
この処女作でルイ・デリュック賞を受けて、一躍、全世界の注目を集めたルイ・マルは、
同じジャンルの作品は二度と作らず、あらゆるジャンルの作品を作ると声明し、
第二作についての準備を進めて来たが、ついに「死刑台のエレベーター」から一年を経て、
「恋人たちLを完成し、1958年度ベニス映画祭に出品して、晴れの監督賞を獲得したのである。
この第二作「恋人たち」の原作は、イバン・ドノンが書いた18世紀末の放胆きわまる短編小説「明日はない」で、 精神的にも肉体的にも現在の夫に不満をもつ若き人妻が、ふと知り合った若者と、 ありったけの情熱を傾けて一夜の燃えるような恋の歓喜を体験し、翌朝、夫も家も何もかも捨てて若者と2人で去って行くという、 きわめてあり来たりのテーマのものであるが、ルイ・マルはこの物語を映画とするのに4ヵ月の準備期間をおいて製作にかかった。 「死刑台のエレベーター」がそうであったように、この「恋人たち」でも、彼は映画技術が描写し得る 最高のものを画面で見せることに、画期的な成功を収めたのである。 また、前作ではマイルズ・デビスのモダーン・ジャズを一貫してバックに流したのが、 今回はブラームズの古典音楽をつかって物語の進展に厚みをもたせている。 また、「死刑台のエレベーター」に引続いて、「抵抗」のフランソワ・ルテリエが助監督を担当している。 カメラを受持ったのは、「死刑台のエレベーター」で、特に夜間シーンに独特の優れた画調を見せたアンリ・ドカー。 この作品の大半を占める屋外屋内の夜間シーンの画調は、言語に絶した見事な手腕を見せている。 出演陣は「死刑台のエレベーター」で絶妙の演技を見せたジャンヌ・モロー。「悪魔が夜来る」「ノートルタムのせむし男」の 名性格俳優アラン・キュニー。「殺人狂想曲」「モンパルナスの灯」の異色女優ジュディット・マグル。 舞台に経験の多いスイスの新人ジャン・マルタ・ポリー。それにポロ選手を演じているジョゼ・ルイ・ド・ビラロンガは、 実生活でもポロの名手として知られる作家で、ルイ・マルの顧いで特別出済をしたものである。 | <物語>
今年30オのジャンヌは新聞社を経営しているアンリ・トールニエと結婚して8年、2人のあいだには
娘が1人あり、ディジョン近くの大邸宅に住んでいた。
夫婦の情愛よりも事業に専心する独裁的な性格のアンリに対しては、ジャンヌは精神的にも肉体的にも
満ち足りないものがあり、そうした不満が彼女の体内にうっ積していた。
そうしたジャンヌの最近のただ一つの慰めは、毎月一度パリの友人マギーを訪ねることだった。 このときばかりは冷くて暗いアンリとの家庭生活から開放されて、大都会の華やかな社交界の空気に溶けこみ、 心ゆくばかり楽しむことが出来た。だがこうしたパーティへ出る回数が重なるにつれて、 常連の一人でポロの名手であるラウールいう、洗練きれた中年紳士の面影が、深く彼女の心の中に喰いこんで行った。 しかしながら、ジャンヌが胸の思いを燃やせば燃やすほど、ラウール自身は表面いかにも如オなくはしているものの、 彼女が満足するほど彼女の思いに答えてはくれなかった。ジャンヌとしてはこうした悩みが夫アンリに気づかれはせぬかと気をもんでいるのに、 当のアンリはそれを知ってか知らずでか、妻としての彼女の存在を完全に無視し続けた。 ジャンヌはそうした冷酷な夫が無情に腹立たしいというよりは、むしろ妬ましい気持であった。 そしてついにある日、彼女はアンリに向って不満のたけをぶちまけた。ところがアンリは彼女の予期に反し、 彼女がイソイソとパリに出て行くのは、自分には言えない秘密をもっているにちがいないとつめよった。 その結果、彼女は身の潔白を証明するために、ラウールたちを自宅に招かねばならなくなってしまった。 ジャンヌはマギーを訪れ、ラウールをマギーの恋人として連れて来ることを頼んだ。 ジャンヌはこの冒険に胸をふるわせて帰途についたが、田舎道で車のエンジンが故障、 彼女はやっと通りかかった一台の車に便乗して修理工場をさがした。 この車の主はベルナールという若い考古学者で、途中の仕事に手間どり、結局、 ジャンヌが家まで送りとどけられたとき、マギーとラウールはすでに来ていた。・・・ (89分) |