若い恋人たち

<The Young Lovers>  (54年英)

<スタッフ>
製作
  監督
脚色

音楽
 編曲・指揮

<キャスト>
アンナ・ゾベック
  テッド・ハチェンズ
  モファット(英国情報局員)
アントン・ゾベック(アンナの父)
グレッグ
ヨゼフ  

アンソニー・ハヴァロック=アラン
アンソニー・アスキス
ロビン・エストリッジ
ジョージ・タボリ
チャイコフスキー
ベンジャミン・フランケル 


オディール・ヴェルソア
デヴィッド・ナイト
ジョセフ・トメルティ
デヴィッド・コソフ
ポール・カーペンター
セオドア・バイケル
 地球上に暗雲がたちこめている今日、英国映画が全世界の人人にさゝやかながら心をこめて贈る 愛のプレゼントである。霧の都ロンドンで、アメリカ青年テッドと、鉄のカーテソの向うにある 小国の娘アンナとの間に芽生えた恋はどのような運命を辿らなければならないか。
 この映画はその悲劇をチャイコフスキイの「白鳥の湖」に乗せて甘く、 ロマンティックに奏でているこの今日の物語を演じる2人の恋人たちは共に新人である。
 テッドのデヴィッド・ナイトは、「麗しのサブリナ」製作の際パラマウントが、 オードリー・ヘップバーンの相手役に抜擢されたが、突然その役はウィリアム・ホールデンに 変り放り出されてしまったことがある。舞台をほんの一寸踏んだことがあるだけで映画は始めて。 アンナのオディール・ヴェルソアはフランスでは名の知れているスタアであるが、 我が国にはまだほんの端役時代の「港のマリー」が紹介されているだけ。 しかし「アンセルモは急いでいる」(伊)、オーソン・ウェルズの「オセロ」等数多く の間題作に出演し、1952年以来イギリスで活躍している。
 助演者には有名な舞台排優で近年テレヴィやキャロル・リードの「文なし横丁の人々」にも 出ているデヴィッド・コソフ、「アフリカの女王」でドイツ砲艦艦長を演じていた セオドア・バイケル、劇作家としても名高い「超音ジェット機」「ホブスンの婿選び」の ジョセフ・トメルティ、「夜の人々」「ジャングルの決斗」のポール・カーペンター、 「浮気は巴里で」のピーター・イリング等の腕達者を揃え、更に英国映画御自慢の新人、 ジル・アダムスが妖艶な姿態を見せる。
 さきにノエル・カワードやデヴィッド・リーソ監督とシネギルド・ブロを創立、 「幸福なる種族」「陽気な幽霊」「逢びき」「大いなる遺産」「オリヴァ・ツイスト」等 幾多の名作を放った名ブロヂューサー、アソソニー・ハグロック=
アランが、 名匠アンソニー・アスキス監督と組んだ第一作である。アスキスの作品は「激情」 及び「ジェット機M7号」が既に紹介されているが、いずれも本領を発揮したものではなく、 未公開の「ピグマリオン」「星への道」「ブラウニング版」 「真面が肝要」等の問題作を監督している。
 脚本を執筆しているロビン・エストリツヂとジョージ・タポリ(「私は告白する」)は 共に有名な作家で撮影監督は「三十大時間」のジャック・アッシャ、音楽はチャイコフキーの 「白鳥の湖」に基き、「彩られし幻想曲」のペソジャミン・フランケルが編曲、演奏指揮した。

 <物語>  運命の悪戯は、ロンドンのコヴェント・ガーデン・オペラ・ハウスでバレー「白鳥の湖」が 上演された、或る冬の夜に始る。
 それは、テッドとアンナを並べて座らせてしまったことだ。 テッド・ハチェンズはアメリカ大使館の暗号室員だが、ガール・フレンドはもとより、 同じアパートに住む同僚グレッグとさえ親しめぬ内気な青年。 アシナ・ゾペックは東ヨーロッパの或る小国の公使の若く美しい一人娘で、 父の秘書を務める空虚な毎日をコソサートやバレーに行くことを唯一の楽しみとしていた。
 チャイコフスキーの美しいメロディーと素晴らしいバレー―― アンナは幼い頃の想い出にひたっていた。それもドイツ軍の占領下、 厳しい苦難の時代に生長した苦しい想い出ばかりであった。 誕生日の夜、両親に連れられて始めて見に行った「白鳥の湖」その夜逮捕され父、 収容所で惨殺された優しかった母――が走馬燈のように駈けめぐった。 それにひきかえ、あまりに美しい「白鳥の朝」――居たたまれなくなったアンアは、 我を忘れてロビーへ飛び出した。 隣に坐っていたテッドは驚いてアンアの後を追った。・・・   (96分)
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