予期せぬ出来事

<The V.I.P.s>   (63年英)

<スタッフ>
製作
監督
脚本
撮影
美術
音楽
テーラーの衣装
マルチネリの衣装

<キャスト>
フランセス・アンドロス
ポール・アンドロス
マーク・シャンセル
グローリア・グリッティ
ブライトン公爵夫人
ミス・ミード
レス・マングラム
マックス・ブーダ
ミリアム
サンダース

アナトール・デ・グランウォルド
アンソニー・アスキス
テレンス・ラティガン
ジャック・ヒルドヤード
ウィリアム・ケルナー
ミクロス・ローザ
ユーベル・ド・ジバンシィ
ピエール・カルダン


エリザべス・テーラー
リチャード・バートン
ルイ・ジュールダン
エルザ・マルチネリ
マーガレット・ラザフォード
マギー・スミス
ロド・テーラー
オーソン・ウェルズ
リンダ・クリスチャン
リチャード・ワッティス
 エリザベス・テーラーとリチャーr・バーーンと云えば、彼らの動静のことごとくが、 たちまちニュースとなって世界中を駆けめぐるという評判のカップルだが、 2人の結婚問題が現在最大のトピックとして人々の関心を集めているやさき、そのご本人たちが 結婚生活と愛情の危機に立つ一組の男女を演じる話題の作品である。
 だがこの映画の興味は、このようなカレント・トピック的な面白さばかりではない。 エリザべス・テーラーにとっては、彼女がアカデミー主演女優賞を受けた「バタフィールド8」以来の 現代劇出演である。またリチャード・バートンはイギリス劇壇最大のホープと目されている上に、 イギリス女性のあこがれの的で、テーラーの心をも捕えた魅力全貌が、はじめてわれわれの前に 紹介されるわけである。さらに、固く愛情に結ばれたこの2人が、どのような演技をくりひろげるかなど、 期待と興味はつきない。
 「私はかねがね、往年の名作『グランド・ホテル』のような映画を作りたいと考えていましたが、 これで長い間の願いが叶いました」と製作者アナトール・デ・グランウォルドは云っているが、 この映画は、ロンドン空港特別待合室に偶然集まった数名の知名人が、14時間の濃霧にわざわいされて、 国際線旅客機の出発を待つ間に、彼らがそれぞれかかえていた問題が重大化し、各人各様の人生の断崖に立たされるという、 サスペンスに富んだドラマチックな作品だが、本質はわれわれの心をうつ美しい恋愛映画である。
 脚本は現在はなばなしい活躍振りを見せているイギリスの劇作家テレンス・ラティガンのオリジナルで、 「旅路」「王子と踊り子」「愛情は深い海の如く」「彩られし幻想曲」「超音ジェット機」など、いずれも彼の作品である。
 監督は「若い恋人たち」「暗黒の弾痕」などのアンソニー・アスキスで、 「求む・ハズ」のジャック・ヒルドヤードが撮影監督に当り、「キング・オブ・キングス」「エル・シド」などの ミクロス・ローザが音楽を担当した。テーラーの数々の衣装は、オードリー・ヘプバーンも大好きなフランスの名デザイナー、 ユーベル・ド・ジバンシィの手になったもの。
 出演者は多彩で、話題の両スターをめぐり、「恋の手ほどき」「カンカン」などのルイ・ジュールタン、 「第三の男」「市民ケーン」などのオーソン・ウェルズ、「ハタリ!」「ローマを占領した鳩」などのエルザ・マルチネリ、 「海
賊魂」「鳥」などのロド・テーラー、イギリスの舞台女優マギー・スミス、「替え玉作戦」のマーガレット・ラザフォード、 久しぶりのリンダ・クリスチャン、「謎の要人・悠々逃亡!」のリチャード・ワッティスらが演技を競う。

 <梗概>  ある冬の日の午前、ロンドン空港は海外旅行者でたてこんでいた。 ニューヨーク向けジェット旅客機の出発をひかえて、次々に到着する知名人の出迎えや、 彼らを機に導くまでの間を特別待合室にくつろがせる仕事に追われていた。
 この日特別室に案内された知名人たちにとって、こんどの空の旅はそれぞれ重大な意味を持っていた。
 まず、新聞記者カメラマンのフラサシュに迎えられたのは、映画界の惑星と目されている 製作者マックス・ブーダと、彼が特別に目をかけている女優グローリア・グリッティだった。 彼の旅行の目的は税金のがれで、昨日一本撮り上げたばかりだが、今日中にはどうしてもイギリスを 離れなければならなかった。もし今夜の12時を1分でも過ぎたら、収税吏が待っていましたとばかり襲いかかり、 約100万ドルの税金を取り立てようとするに違いなかったからだ。
 また、自家用ヘリコプターで空から乗り込んで来たのは、経済界の大立者ポール・アンドロスと、 妻のフランセスである。彼は暖かい休喉をおくろうと中米ジャマイカに旅立つ妻を見送りに来たのだった。 この旅が快適であるようにと願いながら、ダイヤモンドやサファイアをちりばめた腕環を妻にプレゼントした。
 旅に出る妻に贈物をするのはポールにとっていつものことだったが、 夫に対する重大な裏切りを秘めての旅に飛び立とうとしているフランセスにしてみれば、 いつもより一きわ素晴らしい贈物に、心がいたむのだったが、 仕事が多忙のせいか親身な愛情にもう一歩の踏み込みが感じられないのが、フランセスにはたまらない淋しきだった。 こんどの旅行も、貧しいプレイボーイのマーク・シャンセルとニューヨークで新しい人生にスタートしようと決心してのことであった。
 妻を最後まで見送ってやれぬのを残念に思いながら、ポールは11時の重要会議に帰って行ったが、 一日の仕事から戻れば、13年の結婚生活に終止符をうとうとするフランセスの置手紙が待っているはずだった。 ・・・
    (119分)

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