私に殺された男<Orders to Kill> (58年英) |
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<スタッフ> 監督 原作 脚色 撮影 美術 音楽 <キャスト> ジーン・サマーズ マクマホン少佐 ジーンの母 海軍中佐 レオニー |
アンソニイ・アスキス ドナルド・C・ダウンズ ポール・デーン デスモンド・ディッキンスン ジョン・ハウエル ペンジャミン・フラソケル ポール・マッシイ エデイ・アルバート リリアン・ギッシュ ジェームス・ロバートスン・ジャスティス アイリーン・ワース |
人間が人間を殺すという最大の罪悪が、戦争においてはいとも当然のように行われる。
戦争の名の下に、殺される理由の全くない者も、理由ある者と同機に殺される。この映画
は、レジスタンス時代のパリに、殺人命令を受けた男の精神的な苦悩を描きながら、そう
した、戦争というものの本質的な不合理を鋭くえぐり出した作品である。
新進脚本家ドナルド・C・ダウンズのオリジナル・ストーリーをもとに、批評家としても名 高いポール・デーンが映画用に脚色した。 監督は「ジェット機M七号」「若い恋人たち」などでわが国にも知られている英国映画界の長老アンソニイ・アスキス。 重厚なタッチで主人公の精神的苦悩を描き出して、深みのある心理映画につくり上げている。 撮影に当ったのは「ハムレット」「暁の出航」「黒い天幕」などのヴェテラン、デスモンド・ディッキンスン、 美術は「船の女」の老練ジョン・ハウエル、音楽は「文なし横丁の人々」など多くの 作品でおなじみのベンジャミン・フラソケルと、それぞれ一流スタッフが参加している。 演技陣では、主人公の米国青年に抜擢されたカナダ出身の新人ポール・マッシイが、み ごとにこの難役をこなして注目を浴びたほか「ローマの休日」「八月十五夜の茶屋」「陽 はまた昇る」「抱擁」などに出演していた米国の中堅俳優エディ・アルバート、往年の名 花リリアソ・ギッシュ、「スピードを盗む男」「キャンベル渓谷の激斗」の名優ジェーム ス・ロバートスン・ジャスティスなどが、それぞれ堅実な演技を競っている。 なお、この映画は58年のカンヌ映画祭に出品され好評を博した。 | <物語>
1944年、米国空軍大尉ジーン・サマーズはヨーロッパ戦線での戦斗勤務ののち、ポス
トンの自宅へ帰還した。彼の母親は息子の元気な姿に喜んだものの、不安の種はこれからの
仕事だった。いままで戦いの最前線にあった彼にとって、本国の陸上勤務は退屈きわまるも
のに違いないからである。
彼女はいろいろ考えた結果、息子の新しい勤務について、知人で ある特務機関のノラン元帥に依頼した。本人のジーンがフランスで生れ、育ったことを聞い た元帥はこの依頼を、フランス地区担当のキンボール少佐に通じた。 ちょうどその頃、少佐は困難な事件に直面していた。独軍占領下のパリにレジスタンス運 動を続けている地下組織で、連絡員をつとめている一人の男が、ひそかに味方を裏切りナチ のゲシュタポに内通している疑いがあるというのである。ラフィットと呼ばれるその男と準 絡をしている9人の運動員のうち5人が逮捕されたということを聞いた少佐の上官は、ラフ ィットに死の制裁を加えることを命じたのである。少佐にとっての最大の問題は誰をその殺人者 に選ぶかということだった。 元帥からジーンの仕事を依頼された少佐はジーンにその殺人者の役を与えることに決意 し、直ちにロンドンに送った。 ナチの監視の厳しいパリに潜入し、目的をとげるためには困難な訓練が必要だった。ジー ンはロンドンで特務機関の将校マクマホン少佐にさまざまの訓練を受けた。目指す相手の写 真を毎日見ては顔を記憶し、その男の住む街の様子まで暗記した。またピストルの使用法や 人を殺す方法なども教えられた。・・・ (112分) |