信じられぬ世界

<Our Incredible World>   (66年英)

<スタッフ>
原案・製作
監督
撮影
解説



音楽
日本語版語り手


ハロルド・ベイム
エドワード・スチュアート・アブラハム
ガス・コマ
バレンティーン・ダィオール
フランクリン・エングルマン
ダビッド・ゲル
ケント・ウォルトン
ド・ウォルフ
西村 晃


 イタリア人のグァルティエロ・ヤコペッティ監督は「世界残酷物語」を発表し世界中に残酷ブームをまきおこした。 以来残酷ドキュメンタリーの本家はイタリアとなった。
 多くの残酷ドキュメンタリーは主として未開社会にカメラを据え、観客である文明人を驚かせて来た。 しかし未開社会だけに残酷なこと″が存在するのだろうか。もちろん違う。 われわれが現実に日常生活を送っている目の前の世界にも信じられないような残酷なことが数多く存在する。
 この「信じられぬ世界」はそういった日常生活の中に存在する驚くべき事実をとりあげイタリア人が 気がつかなかったジャンルの残酷映画となっている。
 例えば抜歯がある。誰でもが歯医者に行ったことがあっるはずだ。しかし抜歯がどういう状態行なわれるか 見たものはひとりもいない。こんな簡単なことでさえ、スリルとショックを与える。
 多くの観客が思わず目を覆ってしまうシーン――それはイギリス最大の屠殺場における豚の屠殺シーンであり、 無菌豚誕生のシーンであり、羊の屠殺シーンである。まさに凄惨そのものである。
 しかしそれ以上に犬と人間の眼の角膜移植手術は恐ろしい見物である。人類に光を与える医学の進歩が 観客の目を覆わせしめるというのは皮肉だが、大画面にカラーで展開する手術シーンはあまりにも生々しい。
 「自分の周囲の物事から目をそむけることはできても、その物事がなくなるわけではない。この作品を観る ひとは目をそむけることはできる。しかしこれはわれわれの生きている世界の否定できない事実であることを 忘れないでもらいたい。」
 監督のエドワードスチュアート・アブラハムはこう語っている。このドキュメンタリストである新人監督は 執拗なカメラワークで対象を追求し、イギリス人一流の冷静且つシニカルな目による斬らしいタイプの ドキュメンタリーをつくりあげた。イギリスではスリル・アンド・ショック・フィルムといわれて衝撃を与えた。
 原案・製作のハロルド・ベイムは、40年以上のキャリアをもつ古い映画人で、 最近では「クール・ミカド」「スウィングUK」などを製作している。
 撮影はアブラハム監督と同じ新人のガス・コマ。音楽はド・ウォルフ。日本語版語り手は俳優の西村晃。
  (94分)

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