光は愛とともに<The Story of Esther Costello> (56年英) |
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<スタッフ> 製作 監督 原作 脚色 撮影 音楽 <キャスト> マーガレット・ランディ夫人 カルロ エスター・コステロ ハリイ・グラント ウェンゼル 尼僧院長 ポール・マーチャント デヴリン神父 |
ジャック・クレイトン デイヴィッド・ミラー ニコラス・モンサラット チャールズ・カウフマン ロバート・クラスカー ジョルジュ・オーリック ジョーン・クロフォード ロッサノ・ブラッツィ ヒーザー・シアーズ リー・パターソン ロン・ランデル フェイ・コンプトン ジョン・ローダー デニス・オディア |
唖で聾で盲目という三重苦の少女をめぐるさまざまの愛情を描いたイギリスの中堅作家
ニコラス・モンサラットのベストセラー小説を映画化した最新作。 監督ほアメリカのヴェテランで、「われら自身のもの」のデヴィッド・ミラー、 脚本はやはりアメリカの脚本家で「日本人の勲章」の脚本を担当していたチャールズ・カウフマン。 それに「第三の男」の名カメラマン、ロバート・クラスカー、「黒い天幕」の美術監督 ジョージ・プロヴィスと漸進の装置家トニイ・マスターズなどのイギリス組が協力、 フランスからは有名な作曲家ジョルジュ・オーリックが参加するなど、各国の一流どころを集めたスタッフ陣である。 出演者も、アメサカの大女優ジョーン・クロフォードと、イタリア出身で いまや国際スターとして大活躍のロッサノ・ブラッツィ、それに、この映画の女主人公、 三重苦の少女、エスター・コステロ役として特に抜擢されたイギリスの新星、 ヒーザー・シアーズと、これまた各国から選ばれた珍らしい顔合せ。 特にヒーザー・シアーズ、これがデビュウ作ながら、数多い志願者から選ばれただけあって 無垢な少女らしい清純さのうちに見事な演技力を示し、この作品が57年のヴェニス映画祭に 出品された時に主演女優演技賞候補に上げられたほどで、早くもイギリスの オードリイ・ヘップバーンとして人気を集めている。 このほか、「スピードを盗む男」のリー・パタースン、「嵐い中の青春」のロン・ランデル、 「落ちた偶像」のデニス・オディア、「文なし横丁の人々」のシドニイ・ジェームス、 演劇界の大御所フェイ・コンプトンなど、豪撃な顔ぶれの傍役陣が主演者をたすけて、いずれも堅実な 演技を見せている。 | <物語>
南アイルランドのクロンクレイグの田舎町に、あわれにも唾で聾で盲目という三重苦の宿命を
負った娘、エスター・コステロが住んでいた。彼女は8才のとき、子供同志のいたずらから、
ふと手にした手榴弾が爆発し、居合わせた母親は即死、エスターはかすり傷一つ負わなかったものの
そのショックにすべての光と音と発声機能とを奪われてしまったのである。 それから5年、孤児となったエスターは、たった一人の身よりである叔母の許に、 触覚だけをたよりに、動物のような毎日を送っていた。 その頃、たまたま、この町の出身でアメリカに渡り、社会事業家として成功している マーガレット・ランディ夫人が生れ故郷であるクロンクレイグを訪れた。 つねづねエスターの救済について思いをめぐらしていた町の教会の牧師、デヴリン神父は そのマーガレットをエスターの許にともなった。彼女はエスターのとても人間とは思われぬ姿に 一度は眼を蔽ったものの、その余りにも悲惨な有様は優しいマーガレットの心をとらえるに十分だった。 彼女ほエスターをアメリカに連れ帰る決心を固めた。 ボストンの土を踏んだエスターは先ず盲唖学校に入れられた。最初の日、 マーガレットが学校長にエスターを託してそのまま帰ろうとしたとき、エスターは突然彼女を 求めて走り出した。頼りの綱であるマーガレットがいなくなった不安からだった。マーガレットは はじめて少女をひしと抱きしめた。彼女のうちの母性が呼びさまされたのである。 こうして実の母も及ばぬ強い愛情に支えられたマーガレットの苦闘が始まった。 朝から晩までつききりで三重苦の少女に「物」と「言葉」の観念を吹きこんだのである。 それは言語に絶する労苦だった。 ・・・(103分) |