海底二万哩<20,000 Leagues under the Sea> (54年) |
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<スタッフ> 総指揮 監督 原作 脚色 撮影 美術 音楽 <キャスト> ネッド・ランド ネモ艦長 アロナクス教授 コンセイユ |
ウォルト・ディズニー リチャード・フライシャー ジュール・ヴュルヌ アール・フェルトン フランツ・プレイナー ジョン・ミーハン ポール・スミス カーク・ダグラス ジェイムズ・メイスン ポール・ルーカス ピーター・ローレ |
浸画映画、実写映画の分野に野心的な仕事振りを見せ世界の注目を浴びるウォルト・ディズニーは、
愈々ハリウッドで本格的な劇映画製作に乗り出す事となり、その壁頭を飾る第一作として500万ドルの巨費を投じて完成したのが
「海底二万哩」である。この映画は彼が世界一と自負するディズニー撮影所の技術陣を総動員し、
巨大なシネマスコープ・スクリーンに空前のスペクタクル場面を盛り上げる事に成功した。
原作は19世紀後半、フランスが生んだ偉大た空想科学小説作家ジュール・ヴェルヌの代表作で、 1916年に無声映画としてユニヴァーサルで映画化された事があるが、ディズニーは、年代や背景は原作に略々忠実に従いたがら、 物語は原子力時代に相応しい様に自由に手を加えている。最近アメリカで建造された原子力潜水艦第一号がノーチラスと 命名されたのもこの物語からとったものである。 配役は、英国出身の名優ジェイムズ・メイスンを始め、カーク・ダグラス、ニューヨーク舞台の名優ポール・ルーカス、 老巧ピーター・ローレの4大スターが演技を競い、中でもネモ艦長に扮するメイスンの力演は、 彼の作品中でも最高の出来栄えと激讃された。 監督は「恐怖の土曜日」等の俊才リチャード・フライシャー、脚色はアール・フェルトン、 撮影は名手フランツ・プレイサー。 この映画は54年度のアカデミー特殊技術賞及び色彩美術賞を獲得したが、シネマスコープ撮影の画面の鮮鋭度、 誇張味のない立体音響のよさについても素晴らしい技術を見せている。 ディズニーが独特の境地を拓いた新型式の劇映画として注目すべき2時間8分のシネマスコープ大作である。 <梗概> 1868年8月のある晩。南太平洋の空には月もなく、雲の切れ目から星が淋しくきらめいていた。火 | 薬を積んでサンフランシスコに向う貨物船"金の矢"号は、波一つない海面を滑る様に北進する。
甲板で船乗りが唄う哀調を帯びた唄声が闇に消えていく。この平和な南海の夜に、"金の矢"号の運命の瞬間が
刻々と迫っていようと誰が予測し得たろう。
"金の矢"号の左舷約1マイルの海面が突如妖しく黄色に光り始めたと見る間に、寄妙な怪物が 水面に頭を突き出した。三角の頭、燈台の様に光を発する二つの巨大な眼。そして波の下には 鯨の様な形の巨体が黒々と見えている。 "金の矢"号の見張員が、猛烈な速度で追って来る怪物を認めた時はもうどうしようもなかった。 山の様な大波をけたて、唸り声を上げて怪物は"金の矢"号の胴つ腹深く突っ込んだ。 グワァーン!青白い火柱を天高く上げて積荷が爆発し船体は木っ破微塵に吹っとぶ。 すべてがあっという間の出来事だった。 2年前から世界の海洋にはこれと似た奇怪な船舶の遭難が相次いでいた。どの事件も船が一瞬に 沈没してしまうため生存者が殆どなく、原因を掴む事は困難だったが、僅かな目撃者達は何れも巨大な怪物が 突き当って来たのだと証言した。 初めは新聞の笑話欄を賑わす程度だったこの話も、事件が頻発するに従い、次第に深刻な恐怖となって 拡って行った。 世界の海洋及び軍事専門家達は、怪物を巨大な鯨と推測する者と、某国の秘密兵器と考える者に分れて論争し、 各国の政府は自国にその様な秘密兵器がない事を言明すると共に、それぞれ独自の立場から調査を始めていた。 1868牢には惨事は太平洋上に相次いで発生した。殊にサンフランシスコ港所属の最優秀船"金の矢"号遭難の報に 脅え切った船乗り達は先を争って船を棄て、太平洋貿易の中心として栄えたサンフラソシスコは 時ならぬ混乱に陥ってしまったのだ。 ・・・(128分) |