滅びゆく大草原

<The Vanishing Prairie>   (54年)

<スタッフ>
総指揮
製作補佐
監督
台本


撮影
音楽監督
編集
日本語解説


ウォルト・ディズニー
ペン・シャープスティーン
ジェイムズ・アルガー
ジェイムズ・アルガー
ウィンストン・ヒブラー
テッド・シアーズ
トム・マクヒユー他
ポール・スミス
ロイド・リチャードスン
今福 祝(NHK)
 ウォルト・ディズニーの自然の冒険″映画第一回作品「砂漠は生きている」は 全世界に空前の反響を呼び我が国でも、全国総人口の七分の一に近い1200万人が観覧するという 映画興行史上未曾有の大記録を生んだ。
 これに続いて、ディズニーが再び世に問う自然の冒険″長篇映画の第二回作品「滅びゆく大草原」は、 1955年の3月に再びアカデミー賞受賞の栄誉に輝いたほか、世界各国の幾多の映画賞を得ており、 我が国でも文部省特選映画の指定を受けたほか、優秀映画鑑賞会その他の文化、教育諸団体の 推薦を集めている。
 この映画の背景はロッキー山脈をへだてて、大砂漠地帯と相対するアメリカの西部大草原で、 ディズニーは、今なお昔そのままの姿をとどめる草原地帯の奥地に大がかりなロケ隊を派遣し、 2ケ年半以上の歳月と莫大た費用を費して撮影した貴重なフィルムを用い、その昔、 文明がこの土地に侵入する前に、大草原に展開していた雄大で荘厳な大自然のドラマを ダイナミックに描き出し、アメリカ野牛を始め、今日では残り少くなったアメリカの野性の動物たちの 珍しい生態を次々と見せてくれる。
 ディズニーは自らこの自然の冒険″シリーズをいわゆる記録映画とはいささか異るものであると 定義しているが、「滅びゆく大草原」ではディズニー映画独特の手法は一段と強く表われており、 一貫したテーマをもって自然界の物語を美しい詩情の中に描きながら、ディズニーは文明の進歩と共に 次第に失われ行く大自然の姿を惜しみ、映画の最後を「人間も漸く自然の意志を理解し始め、 過去の美しさが未来の美しさとなるように祈りつつ、自然の営みに協力している…」と解説して結んでいる。
 数十人のキャメラマン達による長期のロケは驚異的な成果を見せており、飛行機による超低空撮影や、 スロー・モーション撮影などに驚くべき新手法が見られるほか、アメリカ野牛の凄惨な激斗は キャメラマンが野牛の毛皮をかぶって至近距離に接近し、危険を冒して撮影したもので比類のない 迫力を盛り上げている。
 なお、この映画には、「ディズニー撮影所御案内」と「くじらのウィリー」の2本のディズニー映画が 必ず同時上映される。
   <ウォルト・ディズニーの言葉>

 2年数ケ月の長期間にわたり、私どもの撮影所のキャメラマン達は アメリカ中西部の大草原地帯を歩き廻り、映写時間四十数時間にのぼる厖大な映画フィルムと、 3千枚以上にのぼる普通写真をキャメラに収めたのです。
 彼等は、ワイオミング州奥地の、身を切る様な寒風が吹き荒ぶ中を、キャタピラーつきのトラックに乗って、 また、かんじきやスキーをはいて、かけ廻ったかと思えば、じりじりと照りつける強烈なダコタ州の日照りの中で、 殆ど身をかくすものもなく辛抱強く長い間坐って待ちつゞけもしました。
 兇暴なピューマの跡を追い、危険を冒してバッファローの暴走を待ちうけ、 また草原の恐るべき野火に遭ったり、豪雨にズブ濡れになったり、洪水の危険にさらされたりという辛苦をなめて、 彼等は撮影を続けました。
 こうして、彼等が送って来た貴重なフィルムを、我々は必要に応じて、或いは捨て、或は切って、編集し、 71分間の映画にしました。それが、この「滅びゆく大草原」です。
 自然の冒険″という言葉は単にこの映画の呼び名ではありません。 この映画に出て来るすべての動物バッファロー、ピューマ、プレイリー・ドッグ、その他すべてのものにとって、 これは正に自然の冒険″であったのです。
 我々はこの映画の中で、今までのどの作品に於いても試みなかった新しい事を試みました。 今までの作品では、描かれたものは、たゞある地域に於ける生物の生き方、或いは或る種の生物の 生態に過ぎませんでした。勿論、この映画でも、それと同じ仕事は行っていますが、その上に、私たちは、 大自然そのものの歴史を描いて見たのです。それは、こゝ数十年の間に、驚くべき速さで失われて行く アメリカの自然を、映画という形で記録に止めることでした。
 我々は、この自然の冒険″映画「滅びゆく大草原」を、西部を開拓した偉大な人間たちの歴史と 並べられるべき、大自然の歴史として見て頂きたいのであります。

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