シネラマ・ホリデー

<Cinerama Holiday>   (55年)

<スタッフ>
製作
監督
脚色

撮影

音楽
作曲

<キャスト>
ベティ&ジョン・マーシュ
ビアトリス&フレッド・トローラー

ルイ・ド・ロシュモン
ロバート・ベンディック
オティス・カーニー
ルイ・デ・ロシュモン3世
ジョゼフ・ブラン
ハリー・スクェア
ジャック・シェインドリン
モートン・ゴールド


スターレーウォーナー・コーポレーション社長
   S・H・ファビアン


 「これがシネラマだ」は場所を主とした映画だとすれば、「シネラマ・ホリデー」は 人間を主としたストーリーである。4人の若い2組の夫妻が、彼等の「二度目のハーネムーン」で何処へ行って 何をするかを語るもので、諸君も彼等と行を共にするのである。
 彼等と行を共にするということ、これが、他に類例のないシネラマの魅力である。
 諸君が画中の登場人物であり、又同時に観客でもあるということは古くからの劇場の夢の実現である。 諸君が劇場のシートに坐っていると、諸君の頭脳は強力なシネラマ魔術に魅惑され、 動く画面は現実のものとなり、影像は真実性のものとなる。
 「シネラマ・ホリデー」製作に当ってルイ・ド・ローシュモンはシネラマの語る話の域を拡大し、 幻想を増大した。「これがシネラマだ」に次いで、これ等の問題が持ち出され「シネラマ・ホリデー」が それに解答を与えた。
 シネラマは物語りを取扱い得るであろうか?「シネラマ・ホリデー」はいま迄に 余り遠くへ旅行したことのない2人の若い夫妻の旅行、探倹、娯楽の物語りである。
 シネラマで他の人達の生活の瞬間を親しく味うことが出来るだろうか。
 ジョンとべティーは新しくも又珍奇な気持にひたった一日を終へてホテルに着く、 其の瞬間がそれである。ホテルに着くと宿の事務員がジョンにリドの倶楽部で逢
いたいという友人からの伝言を 渡す。ベティは疲れていたが、ジョンは有名なナイトグラブで一踊りしたいと望む。 ジョンが彼女を一人ホテルに残して行こうとするので、べティが口惜しがり腹を立てるが、これが 笑いとなり、魅力となって親密さという其の人間性を示す一瞬である。
 シネラマが他の如何なる媒介の力も及ばない壮大さを伝え、そして壮観な点に於て 最上のものであるということは明らかである。しかしシネラマは諸君を他の人々の生活を諸君の前にもたらし 且つ諸君をその生活の中に引き入れることが出来るだろうか。諸君はフランス人の家庭に於ける夕べを想い出 して下さい。即ち一番上の子供が若くして戦死し、三代にわたる先祖の写真を見せて、 彼等に就いて語っいる処がある。これは短い対話の瞬間にかいつまんで語られたフランスの歴史のひとこまである。
 斯くしてシネラマは世界を駈け廻わるばかりでなく、人間の心を探り、その心の中にある事件にもはいり込むことが出来る。 シネラマは次々と生れるにつれて、それが又諸君にも新らしい生命を斎らす。世界中の驚異と変化に富む人間の体験を シネラマに依って画面中の人物となし、シネラマが示す不思議を一つ残らず味い、 そこで諸君は自らの体験を増すことが出来る訳である。斯くして、新らしいシネラマが諸君の住んでいる国の 劇場に封切られる時、諸君は長く胸に蔵し、長く忘れることの出来ない催しものとしてそれを期待することが出来るのである。   (119分)

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