チャップリンの独裁者

<The Great Dictator>   (40年)

<スタッフ>
製作・監督・脚本
撮影

美術
音楽
編集

<キャスト>
ヒンケル(トメニアの独裁者)
及びユダヤ人の床屋
ハンナ
ナパロニ(バクテリアの独裁者)

チャールズ・チャップリン
カール・ストラッス
ローランド・トザロー
J・ラッセル・スペンサー
メレディス・ウイルソン
ウイラード・ニコ



チャールズ・チャップリン
ポーレット・ゴダード
ジャック・オーキー
 チャップリン映画と云えば世界中の人々が笑いのシンボルとして しがみつくようにみて来たものである。だがその中でもこの「チャップリンの独裁者」は 人々が特に注目し、みたいと欲した作品である。
 それはこの映画が「チャップリンの殺人狂時代」「モダン・タイムズ」と共に 3大名作と云われ、中でもこの映画がチャップリンの最も円熟していた時に作られた ものであり最高傑作と云われた作品であるからである。
 またそれまでトーキー嫌いで通っていた彼が初めて完全なトーキーを使用した と云うのも人々に興味を抱かせるに足るものであったろう。 だがそれらにもまして人々がみたいと欲し、製作きれた意義を高く評価したのは、 この映画がナチ政権を痛烈に批判している事である。
 「チャップリンの独裁者」が公開きれた当時は1940年であり、 この時代はヒットラーが世界征覇を夢みていた時代である。当時このような映画を 製作する事は余程の気力を必要とする事であるが、彼はそれを敢えて作っている。 そんなところにこの映画のスケールの大きき、意義深き、チャップリンが如何に この映画に情熱を傾けたかが感じられるのである。事実当時、ドイツ、イタリーからは アメリカに対し公的に横槍を入れ、日本もまた輸入を禁止する次第であった。
 映画はこのように独裁者への痛烈な批判を投げかけながらも、従来の彼の面白味、 笑いと云うものを少しも損っていない。これまでの人々のおなじみである山高帽も出れば、 ドタ靴、ステッキと云う姿も現われる。そしてこの映画はチャップリンスタイルの最後の 作品でもある。
 戦後も、我が国では種々の問題がからみ容易に公開出来なかったのを漸くにして 公開の運びにこぎつけた作品である。
 製作・ストーリー・台詞・演出・編集・作曲・主演とすべて チャップリン自身の手でなされている。
 主演のトメニア国の独裁者及びユダヤ人の床屋にチャップリンが扮しているのをはじめ、 相手役の床屋の恋人には「モダン・タイムス」でチャップリンに抜擢された ポーレット・ゴダードが扮しており、ムッソリーニを諷刺した独裁者ナパロニには ハリウッドの特異な喜劇俳優である「八十日間世界一周」のジャック・オーキーが扮して 競演している。
 <梗概>  2回にわたる世界大戦の中間時代、狂気が世界を支配し、人類の自由が失われていた時代の物語である。 1918年第一次世界大戦の末期、敗色濃いトメニアはひそかに平和交渉をはじめていたが、 何も知らぬ将兵は勝利を信じて戦っていた。
 トメニアの空軍将校シュルツは戦斗中敵に包囲きれ危いところをユダヤ人の一兵卒に救われた。 そして2人がトメニアに戻ったときすでに戦争は負けていた。ユダヤ人の兵卒は元床屋であったが 戦傷のため記憶を失って病院に収容された。
 数年が過ぎ、トメニアに政変が起き、その結果ヒンケルと云う独裁者が現われた。 彼はアリアン民族の世界制覇を夢みて、他民族特にユダヤ人の迫害を行なう。そんなとき、 床屋は政変も知らず、ジェケル夫妻やハンナの待つユダヤ人街に帰って来る。 彼はユダヤヘに乱暴を働く突撃隊の将士に抵抗し命を奪われそうになる。だが彼は 突撃隊指令官となっているシュルツに依って救われる。
 ヒンケルは自分の独裁政治をかくすため、国民の関心を外にむけようとオスタリッチ進駐を考えて 軍資金をユダヤ人の財閥に借款を申し入れて拒絶される。 彼はそのために一層ユダヤ人迫害の度を強める。
 このヒンケルの政策に危険を感じたシュルツは 彼にその非を進言する。彼はそのためかえって命を狙われる破目になる。 シュルツは床屋の家に隠れ込む。だが突撃隊によって見付けられ床屋と共に捕えられる。 ハンナは床屋に何時しか恋を抱くようになっていたが、突撃隊の迫害が激しくジェケル夫妻と オスタリッチに逃げのびた。そのころヒンケルと同じような教裁老ナバロニの軍隊がオスタリッチへ進駐した。 ヒンケルはナバロニを招いて軍隊を撤退させようと試みる。ヒンケルはお互にオスタリッチの主権を 尊重すると云う誓約書に署名する事でナバロニの軍隊を撤退きせる事に成功する。
 シュルツと床屋は軍服を盗んで収容所を抜け出し、オスタリッチへ逃げようとした。 国境にヒンケルの来るのを待ち受けていたオスタリッチ進駐の軍隊は床屋がヒンケルに似ている事から、 ヒンケル到着と間違えて直ちに進撃を始める。その頃ヒンケルは床屋と間違えられて 警備の兵に捕えられていたのだ。床屋がオスタリッチに着くと数万の軍隊と国民が歓乎の声で迎え ・・・(126分)

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